コラム【ポイズンピル】

行政書士の前田智也です。

いよいよ、8月も終わりです。
そろそろ、ラジオでは森山直太朗の「夏の終わり」のリクエストが
急増する時期です。今は車移動が少なくなりましたので、
今年は聞くことはないのかもしれませんが・・・・・。

さて、フジテレビ系列の某ドラマで企業買収を取り上げており、
久しぶりに熱くなってしまいました。過去に会社法を吐き気がするぐらい
勉強していた時期があったので、思いのほか楽しむことができました。

 勉強をしていた当時、印象に残っている判例に『ブルドックソース事件』というものがあります。
アメリカの投資系ファンド『スティールパートナーズ』が
日本の企業である『ブルドックソース』を買収する話が浮上し、
仕舞にはスティールパートナーズは公開買い付けにまで乗り出しました。
要は、「私は、ブルドックソースの会社を買収するので、
株を持っている方は破格の値段で買いますよ」ってことを大々的に発表した訳です。

これはまずいぞということで、ブルドックソースの役員たちは手を打ちます。
それは、何とも驚きの手なのですが、スティールパートナーズに関係のない
既存の株主に新たに新株予約権を無償で割り当てることを決めたのです。

この新株予約権とは、株主が希望すれば決められた数の株式を手にすることができる権利のことです。
つまり、これは株式をいつでももらえる予約チケットをタダでもらったも同然な訳です。

この対策にどんな意味があるのかというと、
スティールパートナーズ以外の株主の株式数が増えるため、
今よりも発言力が大きくなり、スティールパートナーズの暴走を阻止することができるのです。

 こんなことをすればスティールパートナーズが黙っている訳がありません。
会社法の株主平等の原則に反するとして訴訟にまで発展するのですが、
結果はブルドックソースの勝ち。
裁判所は、会社を守るための適切な防衛策であるとの判決を下しました。

ブルドックソースの役員が講じた対策に関する会社法の条文がこれです。

 第277条 株式会社は、株主に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当てをすることができる。

あなたはこの条文を見て自分の会社を守る術を思いつきますか?

経営者の方ってすごいですね。
会社法は奥が深いです。

最初の数行で「読むのやめた」って思われるのを覚悟で書きました(笑)
でも、たまには法律家らしいことを書かせて下さい。
今日の会社法講座はこれにて終了です。

前田